技術紹介Technical
ランプランプ寿命と点滅
1.はじめに
熱陰極ランプは始動する時、イオン電流の衝撃が電極に塗布された陰極酸化物を飛散させるので、一回の点滅でランプ寿命は想像以上に短縮される。頻繁に点滅を繰返す使い方は賢明ではない。その程度は点灯回路システムと周囲温度に大きく依存する。電力負荷の大きい低圧水銀ランプは蛍光ランプより点滅による短縮時間は長いく、2002年にようやく6時間強の値が得られた。
低圧水銀ランプの寿命は蛍光ランプの寿命定義に倣い、規定された条件の下で点灯したとき、ランプが点灯しなくなるまでの総時間、又はUV照度が初期値の70%に下がるまでの総時間のいずれか短いものと定義している。尚、蛍光ランプの寿命はJIS C 7601-1989により定義され、照度維持率については、演色性の区分を表す記号がDL, SDL, EDLのランプ及びコンパクト型蛍光ランプは60%までと云う特例が付いている。
ランプの照度が低下するのは、管内の不純ガスの増加、管壁の汚染や水銀の消耗の動程により決まる現象であり、ランプが点灯しなくなるのは、主として陰極の電子放射物質が消耗し尽した時である。電子放射物質の飛散は始動時に激しいので、点滅を繰返すと消耗を増し更に寿命は短くなる。照明ランプを使用する環境ではランプの点滅は必ず伴うので、JISの蛍光ランプ寿命試験の条件は、ランプの点滅サイクルは点灯時間を3時間と定め、点灯している時間の総合計を寿命時間としている。
2.文献から得られる点滅による寿命短縮データ
点滅の寿命に及ぼすデーターは少ない。それは寿命短縮がランプ固有の特性ではなく、安定器の仕様や周囲温度に大きく依存するので、普遍性のある資料になりにくいことが影響している。下記に幾つかの資料を示し、短縮寿命時間を求める。蛍光ランプが特定されていない事が欠点であるが、照明データーブックの図2.731)によれば点滅回数が1日1回の時に寿命が約4500時間であったものが、1日10回になると約2600時間に短縮している。
またこれもランプ種が記載されていないが、イギリスのデーターの一例では、
三時間周期で、平均寿命は3000時間
六時間周期で、平均寿命は3500時間
12時間周期で、平均寿命は4000時間
とされている。
前者では一回の点滅で寿命は約2時間7分、後者では1時間12分から2時間短縮されている。短縮度は完全には回数に比例せず、回数が多くなるほど短縮度は僅かに大きくなる傾向がある。
注:前者の計算方法
一回の始動で短縮される時間をXとすると、次ぎの式が成立する。
4500+(4500/24)X=2600+(2600/2.4)X
(2600/2.4)X-(4500/24)X=4500-2600
(21500/24)X=1900
∴X≒2.12
3.高出力低圧水銀ランプの寿命短縮
過去、当社ではランプの単純寿命試験は、JIS規格に倣い三時間点灯周期で行ってきた。しかし三時間周期で得られたデーターは、寿命の性能比較する時に使い難い欠点がある。三時間周期の条件は生活の場における照明の使用環境を反映させたものである。低圧水銀灯の点灯サイクルは照明用ランプとは異なるので、JIS方式に準ずるのは無理がある。そこで当社は動程試験においては初めから点滅無しの連続で行って来た。単純寿命試験も2002年中頃から徐々に連続点灯に切換えている。
ランプEUV250Uにおいて、2002年1月に連続点灯で8727時間(電気安定器、n=1)の寿命結果が得られた2)。動程試験と周囲条件が同じである過去の点滅テストデーターの中に、総寿命が2767時間(電気安定器、n=3)があったので、この二つの値から点滅による寿命短縮時間を計算して、6時間28分が得られた。
2767+(2767/3)X=8727
X=(8727-2767)(3/2767)
X≒6.46
連続点灯のランプのサンプル数が少ないので、これは当面参考値とする。
引用文献
1) 照明学会編, 照明のデーターブック, オーム社, p126, (1958)
2) 社内資料, 合田哲夫“ランプ寿命性能一覧表SL-T01, R18”6/30(2002)