技術紹介Technical

環境・衛生ガス滅菌方法R3

1)酸化エチレンガス滅菌

 気密に保たれた滅菌内缶に滅菌物を入れ、これに気化された酸化エチレンガスを加温、加湿して導入を行い、一定時間の滅菌の後、排気ガス、空気清浄(エアレーション)が行われるようになっている。滅菌条件は、温度38~60℃、湿度はおおよそ50%RH、ガス濃度450~1000mg/Lであり、作用時間はガス濃度によって適宜決められている。酸化エチレンガスによる滅菌に必要な時間は2~4時間であり、また滅菌後のエアレーションには温度条件により8~12時間もの長時間がかかる難点がある。酸化エチレンガス滅菌法評価の指標菌にはBacillus atrophaeus DSM2277(以前はBacillus subtilis DSM2277)を用いる。

<Manufacturer>

サクラ精機、三浦工業㈱(MIURA CO., LTD)、㈱エルクコーポレション、ゲティンゲ・ジャパン㈱、(Geting Japan K.K.) 他、多数

2)過酸化水素ガス滅菌

 ガス状の過酸化水素は食品産業に包装材の滅菌、医薬品、医約品用ボトルの滅菌に使われている。30%程度の高濃度過酸化水素を霧状またはガス状にして利用しているが、過酸化水素は酸化エチレンに比べ低濃度で殺菌効果があり、数ppm程度、温度は25~40℃程度の温度で殺菌が可能である。この方法におけるB. stearothermophilusに対するD値は0.17分(2mg/L,35℃)との報告がある。D値は対象菌を1桁(1 long)低下させるのに要する時間を示す。

<Manufacturer>

㈱エアレックス、テクニプラスト・ジャパン㈱(Tecniplast Japan Co. Ltd.)他、多数

3)過酸化水素ガスプラズマ滅菌

 プラズマ滅菌は毒性がないこと、排ガス処理が不要なこと、据付けが容易であること(電源のみで稼働)、滅菌時間が短いこと(滅菌時間が機種容量によって異なるが、最大容量200リットルで60~75分)が利点である。しかし、滅菌不適物があること(特に液体、セルロース)、狭腔構造物の滅菌はブースターを使用するなど注意が必要なこと、プラズマ滅菌不能器具があること(プラズマ滅菌では器具が傷む。しかし、現在、その機種数は極めて少なくなっている)、缶体容量が小さいこと(200,100,50Lの3種類)などが欠点である。従って、冷滅菌法としては、酸化エチレンガス滅菌装置とプラズマ滅菌装置が、それぞれの長所を生かして、また欠点を克服しながら当分の間共存することが予想される。ただし、酸化エチレンガス滅菌装置は発がん性などのためにごく近い将来、強い規制が国からかかることになるであろう。現在、その規制をどのようなものにするか検討が進んでいる。

4)ホルマリンガス滅菌

 ホルマリンはホルムアルデヒド35~38%(およびメタノール10~15%)を含む水溶液で、細菌やウイルスなどに有効であるが、皮膚、粘膜(眼、鼻、咽喉など)に対する毒性が強い。古くは、ホルマリンガスとして室内の消毒に使用されたが、アメリカでは「ホルムアルデヒドは強力な発がん物質として取り扱う」とのガイドラインが出され、現在では「病室内で消毒薬を噴霧しないこと」が一般的で、毒性の面から消毒薬の室内噴霧は止めるべきである。D値が大きいことも欠点の一つである。

5)過熱蒸気滅菌

 過熱水蒸気は分粒体の食材の高温短時間滅菌に使われる。香辛料の殺菌で成功してから、糖質を高含有する物質以外の緑茶、お茶の加工品や機能性を持った天然原材料は、ミクロンオーダーの微粉まで殺菌できる。

<Manufacturer>

大川原製作所、カワサキ機工、Q-Lab

6)オゾン滅菌

  オゾンは強力な酸化剤であり、その酸化力により細菌やウイルスなどを殺滅・不活化し1)、脱臭効果も示す。従来法である塩素系薬剤、ホルマリン、酸化エチレンガスなどは残留毒性や副生成物による環境負荷の弊害があるため、近年、最後は酸化に戻るオゾンガスを室内における燻蒸消毒や脱臭に使うことが多くなっている。オゾンガスの消毒効果はメスチリン耐性菌(MRSA)、緑膿菌などでは多くのデータが公表されているが、ウイルスに関するデータは少ない。代わりに表1にウイルスに対するオゾン水の効果を示す。水中ではあるがオゾンは他の滅菌法に比べウイルスに対して極めて強い滅菌力を示している。オゾンガスとオゾン水の殺菌効果はオゾン濃度(C)と接触時間(T)の積CT値で示される。オゾンガスの場合はその他に湿度や温度の影響を大きく受ける。相対湿度50%以下では殺菌効果は極めて低く、湿度80%以上では高くなる。

 オゾン法を応用した滅菌機械は日本の薬事法医療用具製造承認を、オゾン水は1995年12月に、オゾンガスは1996年3月に取得した。オゾンガスは酸素にに戻るので回収は必須ではなく、活性炭や金属酸化物で自動的に処理できることが大きな利点である。

 表1.2-log(2桁)不活化に必要な消毒剤接触量(CT値)の概略値2)

 

Cl2

(mg/L)・min

Chloramines

(mg/L)・min

ClO2

(mg/L)・min

O3

(mg/L)・min

UV

mJ/cm2

E. coli 0.034~0.05 95~180 0.4~0.75 0.02 5.4

rotavirus

poliovirus

0.02

5000

1400

0.2~0.5

0.2~6.7

0.019~0.064

0.2

25

21

Giardia lamblia

Cryptosporidium parvum

47~150

1600

2200

7200

26

78

0.5~0.6

5~10

5

1~10

Note 1: CT値は濃度(C)と接触時間(T)の積である

Note 2: UVは他のパラメーターと異なり、UV照射と時間の積であるUV照射量で表す。

 引用文献

1.神力就子 et al,”オゾンによる核酸の分解に関する研究” 北海道工業開発研究所報告, 第40号, pp1-77(1986)

2.JWRC編、代替消毒剤の実用化に関するマニュアル, 水道技術研究所,p143(2002)

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