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水処理紫外線とオゾンの殺菌(R5)

UV/Ozone殺菌と循環水処理システム

1.紫外線とオゾンによる水殺菌
水の殺菌には塩素殺菌が多く使われていますが、塩素消每によって生成される塩素化合物には、発癌性の高いトリハロメタンや腐食・異臭のもとになる有害物が多くあります。それに対し紫外線やオゾンには、表1 に示すような長所があるので、環境・衛生面から塩素に代わる消每技術として利用が増えています。
紫外線とオゾンの両方ともに殺菌に有効ですが、それぞれ長所・短所があります。オゾンを水殺菌に使う時は、最低0.4ppm の水中オゾン濃度と4分以上の接触時間が必要で、接触時間が長いため流水殺菌には大きな反応槽が必要です。排オゾンの処理も必要で、設備費とランニングコストのいずれも高価であることが難点です。ただしオゾンの効果は殺菌だけでなく、有機性汚濁物の処理ができます。紫外線は超純水のごく希薄なTOC 成 分を除去するのに使われている以外は、単独では殺菌しか期待できません。しかし殺菌に要する接
触時間は秒単位と短いので、装置は非常にコンパクトにできます。
紫外線殺菌装置(サニトロンⓇ・タンクレイア)と紫外線が生成するオゾンを併用する、特殊促 進酸化水処理装置(UZONⓇ)の使い方と特長を説明します。

2. 流水殺菌と貯水殺菌
2-1. 3-log 殺菌に必要な紫外線露光量

流水殺菌(管理殺菌)
→ワンパス処理
→循環処理

貯水殺菌(汚染防止)
→空間殺菌
→水中殺菌

水の殺菌方法には流水殺菌と貯水殺菌があり、流水殺菌には、ワンパス処理と循環処理があります。ワンパス処理は、水は殺菌装置と一度しか接触しませんが、循環処理では水は何度も殺菌装置と接触します。殺菌装置の仕様を決める時、装置を通過する時の殺菌率を設定して処理量を設計することが必要です。微生物は生物なので時間と共に繁殖します。例えば無機物は50%除去すると、その効果は持続します。しかし微生物は50%除去しても早い時は数十分で元の数に戻り、そのまま繁殖を続けます。有効な殺菌率は使用目的や周囲の条件により変わりますが、現在は一回のワンパスにおいて、99.9%の殺菌率を採用することが実用的とされています。99.9%は3log 若しくは 3D とも表示されます。微生物の殺菌に必要な紫外線量は対象菌によって異なります。表2 に代表的な微生物を3log 殺菌する時に必要な殺菌線の値を示します。表の値は多くの研究者の文献から収録したもので、試験条件は実装置の条件と異なるので、表2 の値と実機の所要紫外線量の値は必ずしも一致せず、実機は数倍必要ということが多いようです。

表1.水殺菌における紫外線とオゾンの特徴

  紫外線 オゾン
所要接触時間 数~十数秒 4分以上
スラッジ
残留効果 数10分
排オゾン処理 不要
菌の選択性
耐性菌 作らない 作らない
有機性汚染 効果なし 除去効果あり
水の異臭 作らない 脱臭効果あり

表2.3log 殺菌に必要な殺菌線露光量
単位:mJ/cm2 =mW・sec/cm2

菌種 紫外線量
大腸菌 6.5
赤痢菌 4.3
黄色ブドウ球菌 9.3
馬鈴薯菌 17.9
枯草菌 21.6
枯草菌(芽胞) 33.2
日本酒酵母 19.6
ビール酵母 18.8
レジオネラ菌 4.01
インフルエンザウィルス 3.4(90%)
緑色胞子(チーズ類) 39.0
黒色胞子(全食品) 396.0

2-2. ワンパス処理
流水の一過タイプの処理は、基本的に図1 に示すようなフローで、最も多く用いられる水の殺菌方法です。飲料水、原料水、希釈水、洗浄用水や冷却水の殺菌が主ですが、対象が紫外線の影響を受けず、紫外線の透過率が良い素材であれば、水以外のもの例えばコーンスターチ・液糖や化粧水原料などの殺菌にも使われます。ただし、紫外線を透過しない液体には使えません。殺菌装置の設置場所はユースポイントの直前が好ましく、用水をほぼ無菌状態まで処理出来ます。対象とする菌種によって殺菌に必要な紫外線量が変るので、処理量の設定は顧客が対象とする菌種と要求水質、即ち顧客仕様に基ずいて決めます。しかし顧客は菌種を指定しないことが多く、その場合は指標菌に大腸菌か枯草菌芽胞が選ばれることが多い。当社のカタログに掲載するデータも、大腸菌と枯草菌芽胞を採用しています。大腸菌は国際的に広く使われている指標菌なので、国際的に性能を比較する時は便利ですが、大腸菌は紫外線に弱い菌なので実用的ではなく、通常は枯草菌が指標菌として扱われます。顧客の要求により指標菌は変えることが出来ます。
比較的多く使われるのは、腸炎ビブリオ菌やレジオネラ菌などです。

2-3. 循環処理
流れる水は腐らないと言われますが、自然界と異なり人工的な循環システムでは水は必ず汚れて腐敗します。汚染物は無機や有機化合物と微生物が主です。室温以上で使われる装置では、始めは微生物の数が微量でも、その後の繁殖によって対数的に急増します。循環利用水の浄化システムのフローは濾過装置と殺菌装置が中心になって構成されますが、図2 のようにユーゾンや活性炭反応塔を組合わせて使うと高度処理が出来、活性炭の寿命は4-5 倍に長くなります。
微生物による汚染は、水の循環システムでは汚染の大半を占めるほど比重が高いのですが、システムを設計する当初は微生物抑制が軽視されることが普通です。その結果、システムをある程度使ってから微生物による不良が製品に起こり始めてから、水系を調査して水が淀む各所にスライム(バイオフィルム)が発生していることを発見し、それを分析して藻類の群体であることを知って、慌てて微生物対策を立てることが多いのが現状です。システムに殺菌工程を加えることが有効な循環水システムを、表3 に示します。◎印が付いているのは、当社の標準品です。
循環処理システム設計の基本仕様項目は、水系の保有水量と循環数です。汚染物の持込量や微生物の繁殖速度は、循環システムによって異なるので、循環数も大きく変わります。これまでの経験から得られた循環数を表4に示します。冷塩水解凍のように一時間に2~4 ターンの高回転を要するものから、庭園の池水や貯水槽のように一日に1~2 ターンで良いものまで、大きな幅があります。
循環処理では流量を抑えてワンパスの殺菌率を高くするより、流量を大きくして回転数を高くする方が浄化効果が高いので、殺菌装置の処理量は大腸菌対象で設定します。しかし表4 の循環数はあくまで当初の目安であって、水槽や池の深さ、淀みの有無、魚の数などの水系の負荷などを考慮して、処理条件を設定することが大切です。それに加えて定期的清掃や保守管理が極めて大切です。

表3. 循環水システム

◎水景用水(噴水・池)
◎鑑賞水槽(水族館)
◎水産養殖
◎温水プール
◎フロ・温泉
○電解メッキ液
○オフセット印刷湿し水
○クーリングタワー
○貯水槽
○冷塩水解凍

◎標準品 ○都度設計

表4. システムの水循環数

用途 ターン
水景、鑑賞水槽 1~2(T/D)
水産養殖 1~2(T/H)
プール・フロ 4~6(T/D)
貯水槽 1~2(T/D)
冷塩水解凍 2~4(T/H)
クーリングタワー ~4(T/H)

3.水景用水・水族館用水の浄化
水景用水の浄化システムの基本は、図3に示すように濾過装置、殺菌装置、除塵装置で構成されます1)。系の保有水循環数は、殺菌装置に関しては一日当たり1~2ターンです。池水量が尐ない時はろ過装置の循環数は殺菌装置より大きいことが多いので、その時はトータルコストを勘案すると、ろ過と殺菌系を分岐して流量調整する方が経済的ですが、池水量が1000m3を超えるとろ過装置の循環数も一日当たり1~2ターン1)と両者の流量が一致するので、分岐の必要はなくなります。
魚が泳ぐ池、子供が遊ぶ親水型“せせらぎ”や噴水、水族館の鑑賞水槽などの水は、透明で美しくしかも衛生的に安全なものでなければなりません。景観用水の汚れの主犯は微生物、それも繁殖した藻類です。夏の池は濁っているのに、冬の池は透明なことが多いのはその証拠です。餌の残りや魚の排泄物などによる汚れがそれに次いでいます。衛生面の安全第一は、水に戯れる子供たちがウィルスや病原性微生物に感染することを防ぐこと、第二に貴重で高価な魚の病気を防ぐことです。そのために消每・殺藻対策が求められます。
微生物、特に藻類が増殖するために必要な四大要素は
1) 栄養 2) 光 3) 温度 4) 滞留時間
です。水景用水はこの四つの条件を全て備えているので、藻類や病原性微生物の繁殖は避けられません。単に水が透明なるだけで良く、人や魚への配慮が要らないときは、薬が使えます。しかし魚のような生物への配慮が必要な時は、紫外線やオゾンが消每・殺藻に最適です。紫外線単独のサニトロンも使えますが、紫外線とオゾンを併用する特殊促進酸化水処理装置(ユーゾンⓇ)は、水中の溶存酸素を補給し、消每だけでなく尐量ながら有機性汚染物の除去も可能なので、水族館の鑑賞水槽用水の浄化に特に適しています。ユーゾンのオゾンは紫外線で発生させ、紫外線で活性化を促進して早く消滅するので、無声放電のオゾナイザーとは異なり、有害なほど多く残らないことは多く実証されています。

4.フロ・温泉の浄化
劇症肺炎の一種であるレジオネラ症の原因菌のレジオネラ属菌は、土壌中に生息するグラム陰性桿菌ですが、自然界に広く分布しアメーバーなどの原生動物の体内に寄生し増殖します。一般に20~50℃で繁殖し36℃前後で最もよく繁殖します。細かい水滴(エアロゾル)や土ぼこりに付着して生活環境に入込み、生殖し易すい場所であればどこでも繁殖します。これまでに空調のクーリングタワー、循環式浴槽、給湯設備、温泉水、加湿器、水景施設等からレジオネラ属菌の検出が報告されています。 レジオネラ属菌は、PH3 以下の酸性の温泉や60℃以上の高温のお湯には生息しませんが、アルカリ性の温泉ではレジオネラ属菌が生息可能です。
厚生省により2000 年12 月15 日付けで「公衆浴場における水質基準等に関する指針」が全面改正された時、レジオネラ属菌の水質基準値に10cfu/100ml 未満という基準が設けられました。 レジオネラ属菌の感染力は弱く普通は人へは感染しないが、抵抗力が弱った人には感染(日和見感染)し、劇症肺炎に似た症状を起こします。普段健康な人がレジオネラ症に罹っても症状が出なかったり、軽い風邪程度の症状で済んでしまいます。一方、老人や抵抗力が低くなっている人は重い肺炎を起こして、レジオネラ症に効かない抗生薬を投与されている間に、短時日で死亡するケースが報告されています。最近は温泉や病院での死亡が増えており、犠牲者はほとんど病人や老人です。
プールや水景の浄化システムのフローは図2 と図3 に示しました。フロの場合も基本的に考え方は同じですが、フロの場合は2001(平成13)年9月11 日付け厚労省の健衛発第95 号「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」の指導があり、ろ過器について「循環ろ過装置は1 時間当たりで、浴槽の容量以上のろ過能力を有すること」の指導と残留塩素の規制があります。したがってろ過器の能力は系の保有水量を一時間に1 ターン以上回転しなければなりません。フロの殺菌装置に求められる循環数は表4 に示すように一日当たり4~6 ターンなので、一時間のターン数は浴槽容量の6 分の1~4 分の1 で効果があります。そこでフロ・温泉の浄化の場合は図4 のようにろ過後に配管を分岐して、処理する方がコスト面で有利です。
殺菌法には塩素殺菌・オゾン殺菌・紫外線殺菌(サニトロン)・加熱殺菌があります。塩素・オゾン共に消毒の残留効果がありますが、独特な臭気がありクロラミンやトリハロメタンなどの副生残留薬物への対策が必要です。これに対し紫外線は全く残留せず、水質への悪影響はありません。
しかし紫外線を透過しない濁度のある水の殺菌には向いていません。
レジオネラ菌の1log の不活性化に必要なUV 露光量は1mJ/cm2 とされており2)、3log の不活性化には4mJ/cm2 のUV 露光量が必要です。一般に病原性の強い菌は紫外線に弱く、レジオネラ菌も例に洩れず大腸菌より弱く、紫外線はレジオネラ菌対策に有効で、殺菌装置メーカーが表示している大腸菌指標の処理量で充分対処できます。しかし冷却塔やフロなどの実際の施設は長期間使っている間に、水系の内壁面にスライムが形成され、そこからレジオネラ属菌が供給されるので、循環水をUV 殺菌するだけでは効果は低く、連続的なUV殺菌に加えて、定期的に化学的殺菌洗浄を併用することが、安全なレジオネラ属菌対策に必要です3)。

5.貯水消毒
貯水消每には循環方式と図5 に示すような紫外線光源を槽内に設置する方式があります。
タンク内光源方式は当社ではタンクレイアと称し、タンク内上層空間部消每と水中消每があります。貯水消每はいずれも貯水と貯水槽経由の汚染防止が目的で、流水殺菌のような積極的な殺菌ではありません。しかし水のシステムでは水が滞留する貯水槽から外気汚染される機会が最大なので、そこをガードする貯水ポイント消每はシステムのバイオ汚染を防ぐ上で経済的で効果の高い方法です。しかも流水殺菌に比べ、貯水消每に必要な紫外線量はきわめて低い値で効果を発揮します。例えば枯草菌(芽胞)を3-log 減尐させるには文献データでは33.2mJ/cm2の紫外線が必要ですが、僅か0.006 mW/cm2 以上のUV 照度があれば、枯草菌より強い藻類・海草の海生生物の壁面における付着・生育を防げることが、火力発電所の実験で確かめられています4)。
最も一般的な貯水消每装置は、紫外線ランプを水中で点灯させるタイプで、多くのメーカーが販売しています。図5 のユーゾン式貯水殺菌装置は、紫外線単独の欠点をオゾンと併用することで補った、当社新開発のダイナミック効果を示すタンク消每装置です。

引用文献
1.日本水景協会編, “水景技術標準(案)解説、平成14 年版”, 日本水景協会, 10 月(2002)
2. 金子光美,“消毒(28)”月刊浄化槽, No.220, 8 月号, (1994)p40
3. 懸 邦雄,“冷却水におけるレジオネラ汚染の現状と対策”, 防菌防黴, 27(8), (1999)p541-550
4. 相沢善吾 他5 名, “紫外線照射による復水器水室の海生生物汚損防止技術”, 火力原子力発電,
40(8), p939-946,(1989)

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